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2026年6月5日、経済産業省は「ファミリーガバナンス・ガイダンス」を公表しました。
同ガイダンスは、主に非上場の中堅規模のファミリービジネスを念頭に置きつつ、上場・非上場、企業規模を問わず、すべてのファミリービジネスにとって重要な内容とされています。また、各企業が、株主構成、役員・従業員・取引先・地域社会等との関係を踏まえ、自社に合った形で検討する任意のガイダンスとして位置づけられています。
同ガイダンスは、ファミリーガバナンスについて、特に事業承継時といった節目において、より重要になると位置付けています。
事業承継というと、後継者への株式移転、相続税・贈与税、遺留分対策などが中心に語られがちです。しかし、実際には、株式を移した後も、後継者、非後継者、親族株主、先代、配偶者、次世代、従業員、金融機関、取引先との関係は続きます。
そのため、事業承継は、単に「株式を移す手続」としてではなく、承継後の親族・株主・経営者の関係をどのように維持し、会社の持続的成長につなげるかを考えるプロセスとして捉える必要があります。
ガイダンスの参考資料では、日本のファミリービジネスについて、家族の紛争が「全く発生しない・ほとんど発生しない」と回答した割合が88%とされています。一方で、家族憲章を整備している企業は9%、株主契約も9%、家族の入社・退社のルールは8%にとどまり、「いずれのポリシーもない」とする企業も39%に上ります。
このデータからは、日本のオーナー企業では、家族間の関係が比較的安定している一方で、その関係を支えるルールの文書化は必ずしも進んでいないことがうかがわれます。
長期的な信頼関係、迅速な意思決定、創業者の理念の共有、地域社会との結び付きは、ファミリービジネスの強みです。
もっとも、その信頼関係があるからこそ、後継者選定、株式保有、親族の会社への関与、配当・役員報酬、先代の承継後の役割などについて、明文化が後回しになりやすい面があります。その結果、承継時や相続時に、関係者の認識のずれが表面化することがあります。
たとえば、次のような事項は、事業承継時に関係者の認識のずれが生じやすいテーマです。紛争が生じてから初めて考えるのではなく、平時のうちに関係者の期待や役割を確認しておくことが望まれます。
・後継者をどのような基準で選ぶか
・後継者以外の親族が株主として残る場合、どのように情報共有するか
・親族が会社に入社する場合、どのような基準・手続を設けるか
・役員就任・退任、報酬、退職金について、どのような考え方を共有するか
・先代は承継後にどのような役割を担うか
・株式が相続により分散することを、どの程度許容するか
・株式を外部に譲渡したい親族が現れた場合、どのように対応するか
ガイダンスも、ファミリービジネスでは、創業期には一体であった「家族」「所有」「経営」が、企業の成長とともに徐々に分離し、関係が複雑化するため、ガバナンス上のリスクが顕在化しやすくなると指摘しており、各企業が、株主構成や役員・従業員・取引先・地域社会等との関係を総合的に踏まえ、自社に最適な形を検討することを推奨しています。
したがって、ファミリーガバナンスは、すべての企業が同じルールを一律に整備するものではなく、平時のうちに関係者の期待や役割を確認し、自社に合った形で少しずつ整えていく取組といえます。
ファミリーガバナンスは、ファミリービジネスにおける平時の信頼関係を承継後も維持し、会社の持続的成長につなげるための仕組みとして位置付けられます。ガイダンスでは、ファミリーガバナンスの取組を、主に次の5つの柱で整理しています。
・理念・価値観・ビジョン等の明確化
・ファミリーとしての意思決定の仕組み
・ファミリービジネスへの関与方針
・所有・経営の承継
・ステークホルダーへの情報発信
もっとも、ファミリーガバナンスは、家族間の話合いだけで完結するものではありません。必要に応じて、定款、株主間契約、種類株式、遺言、民事信託などの法的仕組みと組み合わせることで、話合いの成果を実際に機能するルールに落とし込むことができます。
当事務所では、株主構成の整理、後継者への株式承継、株主間契約・種類株式の設計、遺言・民事信託の活用、ファミリー憲章の作成支援など、オーナー企業の事業承継・ファミリーガバナンスに関するご相談を承っています。
